そして殺人者は野に放たれる

刑法39条問題を子細に追っていて興味深い。豊富な事例で裏付けた上での、39条は即刻削除すべしという提言には説得力がある。心神拘弱の認定に関する問題意識は共有できるものだ。日本の法曹が思考停止、機能不全に陥っている現状は何としても変えなければならない。

しかし強姦問題や女性教祖に言及する章を挿入する必要があっただろうか。やや唐突感があり、読んでいる方の緊張がゆるんでしまった。タイトルとの整合性を考えてもこの本に収録しないほうがよかったのではないか。異質な感じが否めない。

むしろそれより他国の状況報告にページを割いて、判例を交えて議論の肉付けを行った方がよかった。日本の刑法の異常さをさらに強く浮き彫りにすることができたのではないかと思えて残念でならない。