近江飛龍劇団

当初大衆劇団という単語から連想したのは、メインストリームから外れ、よりコアな層を相手にしてのリハビリ的な興行というイメージ。しかし、その予想はいい意味で裏切られた。

座長のマルチパフォーマンスからは、徹底したプロ意識に根ざした才能のほとばしりが弾けだしていた。

これはもう完全にひとつのカテゴリーを作っているじゃないかという感動に襲われた。しかもこの機会に恵まれなかったら、大げさに言えば一生出会えなかったかもしれない類のだ。

座長の演技の多彩さ、目配りの幅の広さ、完成度と、公演の3時間30分間まったく飽きさせない工夫がみなぎっていた。この貪欲さ。ひたむきさ、前向きさ。日頃の自分の仕事に対する取り組みの甘さにまで考えが及んで、恥ずかしくなったくらいだ。

座員の若さにも驚く。男女とも平均20歳くらいだ。ほかで使いものにならなくて流れてきたというより、はなからこの世界に狙いを定めてきたといった風情だ。

今は、ヤンチャな子供たちを従えての座長の果てしないエンターテインメント披露といった趣だが、この劇団のポテンシャルには大いに期待が持てるし、今後のさらなる充実がとても楽しみである。