もはや過去の60代は存在しないか

アクティブシニアが増えているという。日経MJの調査によると首都圏・近畿圏の60代の37.5%がそれにあたるとのこと。

皆、シニアに分類されたり、老人扱いされることが嫌いなのだそうだ。60代以上の人間の意識が大きく変わり、それにともなって社会全体の老人像が変化していることの証だろう。以前なら「自分は若い」「年寄り扱いするな」と言ったところで、ジジィババァのレッテルを張られた人間は、社会全体につくられた老人は老人らしくしろといった空気の中に強引に押し込められ、口をつぐまされていただろうからだ。

確認できる数字を日経の記事から拾ってみると─
●50代のときに比べて自分の楽しみが増えた…56%
●現在、趣味を持っている…87%
●メールをよく使う…25%
●インターネットで情報を集める…27%
(昨夏実施された団塊の世代のメール、ネット利用は約4割)
●昨年2回以上国内旅行に出かけた…70%
●過去3年の間に海外旅行を経験した…69%
●月2回以上外食に出かける…58%
●シニア向けをうたった商品を買ったことがない…74%
●気持ちは若い方…87%
●買いたい商品やサービス
 ・国内旅行…52%
 ・薄型・ハイビジョンテレビ…36%
 ・住宅の改装…21%
●ほしい商品が見つかるまで買わない…67%

●一世帯当たりの資産総額
 ・2千万以上…38%
 ・5千万以上1億円未満…28%
 ・1億円以上…12%

もしこの調査が本当に60代の人びとの姿を正確に映し取っているとすれば、私がこれまで抱いていた老人像に修正を加えざるを得ない。老人の行動パターンがこれまでマスコミでステレオタイプに描かれてきたものとは徐々に変わってきているだろうことは薄々感じてはいたものの、それが想像以上のスピードで進んでいるのだということである。

60代の7割がフリークエントトラベラーであるということは旅行業界にとってはまさに巨大なマーケットである。しかもこだわりにこだわり抜いて商品を選ぶという行動パターン、これは今までのお仕着せ的な観光旅行が見向きもされなくなっていることを明解に物語っている。また、全体の40%が5千万円以上の世帯資産を保有しているというのも驚きだ。自分が納得したもの対しては大盤振る舞いも辞さないということだ。

ネットでの買い物にはまだ抵抗感があるようだがそれでも10%が経験済みというのは、予想以上に多いと思う。PCの改良によってテレビライクな使い勝手になれば、あるいは現在進みつつあるテレビとPCの機能融合が普及すれば(地上デジタルは関係ないだろう)、一気にブレイクする可能性を孕んでいるわけだ。問題はそのXデーがいつになるのかを見極められるかどうかだ。

9割近くが気持ちは若いほうだと考えているのであるから、若い世代とのライフスタイルの均質化が進んで行くことになるのだろう。好まれる商品やデザインも急速にクロスオーバー化に向かうのではないだろうか。